最高裁判所第一小法廷 昭和46年(オ)281号 判決 1972年2月17日
主文
理由
上告代理人永山栞の上告理由一の第一点について。
原判決(その引用する第一審判決を含む。)の確定した事実関係のもとにおいて、訴外木島秀夫、同東洋交通有限会社および被上告人の法律関係につき通謀虚偽表示に関する民法九四条二項を類推適用すべきものであるとした原審の判断は、正当として是認することができる(最高裁判所昭和四〇年(オ)第二〇四号同四五年七月二四日第二小法廷判決、民集二四巻七号一一一六頁参照)。被上告人は右民法の規定による保護に値いしない者である旨の所論は、訴外石井三次郎名義の仮登記が有効であることを前提とするものと解されるところ、右仮登記が無効であることは、つぎに説示するとおりであるから、所論はその前提を欠く。論旨は、採用することができない。
同一の第二点について。
所論訴外石井三次郎名義の仮登記は無効である旨の原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠関係に照らして、是認することができる。したがつて、原審の右判断を非難する所論は失当であり、また、その余の所論は、原審において、右仮登記が有効なものと仮定してなした無用の説示に対するものであるから、その当否を論ずるまでもなく、原判決の結論に影響を及ぼしえないものとして排斥を免れない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用のかぎりでない。
(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)